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リスクVS効果の計算法 - 原子力の安全性・危険性 -

リスクVS効果というと多くは「最悪の事態を想定すべき」という人と「利益を享受している限り多少のリスクには我慢すべき」という人に分かれます。これらの考え方はいわゆる極論と呼ばれるものです。

現実には保険会社や株式投資家は、独自に評価を行い毎日取引を行っていますし、裏では原発が動き続けています。彼らはどのような基準で判断しているのでしょうか。

リスク計算の仕方

「原発で事故がおきたときに、国でも責任が取れない。」と言う声があります。そもそも、どのようにして「対策をとった」と評価しているのでしょうか。ごく一般的な事故発生確率の計算方法を紹介します。

基本は二種類です
同じ機器を予備で用意したときに壊れる確率 壊れる確率×壊れる確率
例えば・・・

あなたが仕事で使用しているパソコンは1%の確率で壊れます。パソコンが壊れたときに仕事に支障が出ないよう、まったく同じパソコンがもう1台あります。両方のパソコンが同時に壊れ、仕事が出来なくなる確率はいくつでしょう?

答え:0.01×0.01 = 0.0001 (0.01%)

2つの機器からなるシステムが壊れる確率 1-{(1-前の機械が壊れる確率)×(1-後の機械が壊れる確率)}
例えば・・・

壊れる確率が1%のパソコンを使って、壊れる確率が5%のプリンターに出力しています。両方が正常に動かなければ印刷できないのですが、印刷できなくなる確率はいくつでしょう?

答え:1-{(1-0.01)×(1-0.05)}=0.0595 (6 %)

*壊れる確率にはいろいろな推算方法があります。しかし、原子炉が動いている時間だけでも30年間。点検は一年おきになされます。さらに昔から使われてきた機器を組み合わせたものが原子力プラントなので、もはや実測値としても問題ないのではないでしょうか。

原子力発電所ではこの確率が「隕石にあたって死ぬ確率より小さくなるように」設備を複数用意したり、高価な機器を使ったりしています。原発の事故は「隕石にあたって死ぬ確率より小さい」ものなのではなく、「隕石にあたって死ぬ確率より小さくなる」まで労力をかけたと言うことです。なお、もともと軍事施設として設計され、大事故を起こしたチェルノブイリではそのような対策はとっていませんでした。


保険会社は?

出てきた確率に補修比や損害が出てきたときの賠償額などをかけると「期待値」と言うものが算出されます。「期待値」よりも高い保険額を設定すればその分が儲けと考えることが出来ます。

利益の考え方

原子力は寿命30年で計算しています。当然寿命のうちに建設費の元が取れるように原発を稼動するので、寿命を延長して動かす場合には元を取る必要がなくなった分が利益となります。実際にアメリカでは原発投資家が増えているといわれています。


確率に出てこない危険(潜在的危険性)

かつて制御棒を入れない状態で燃料交換をしたということが問題化しました。いかに安全対策を立てても、本来の使い方と異なる使い方をすれば当然危険な状態となります。

このような潜在的危険性を避けるために、さらに原子炉は原子炉格納容器、原子炉建て屋によって二重に囲まれています。

飛行機によるテロが米国で発生しましたが、欧州ではかつて航空機による被害について検討するため、原子炉格納容器を模擬した壁に5tの鋼鉄を80 km/hでぶつけ、破壊されなかったことを確認しています。日本の壁はそれ以上に厚いため非常に高い耐性を持っていると思われます。しかし、フランスでは先日のテロ以前から原子炉上空に航空機が進入した場合、撃墜できるようにミサイル配備や法律整備を行っています。全て技術の問題として片付けるのではなく、テロを未然に防いだり、テロ被害を抑える努力も必要なのではないでしょうか。


 私(著者)はしばしば「いかなる技術や行動も原子力の危険性よりましだ」という話を耳にします。私は彼らの心の中の思いまで否定するつもりはありませんし、具体的に危険性があるならば是非ご指摘いただきたいと思います。
 しかしながら中には、なぜか正確な回答ができる当局に聞きに行かない、こちらが評価安全確認した結果を無視する、対策を立てることに反対する、事故があっても放射能と関係ないことは無視する、といった方が見受けられるのです。こうした行為は、原子力が危険であると言う自分の思想を証明するために事故や風説被害を期待していると判断せざるをえません。
 安全学というものが原子力を中心に発展してきたことは紛れもない事実です。一方で、原子力を初め、石油産業、食品、相次ぐ技術界の不祥事や事故によって日本に対する世界の評価は確実に下がっています。原子力に反対でもかまいません。しかし、何かを学んでいただけないでしょうか?本ページではそれのみを願っています。


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