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即発臨界とは?

2007年4月24日NHKクローズアップ現代で北陸電力の臨界事故について取り上げられました。番組の中では絶対に起こしてはならない即発臨界が起きていた可能性があるという説明がありました。

ところで、即発臨界とは何でしょうか?

臨界とは核分裂を起こす中性子と、核分裂で発生する中性子の数が同じ状態のことを言います(参照)。実は新品の原発は燃料だけで臨界になることはありません。もちろん、このままでは原発を動かすことも出来ません。

どうしているかと言うと、まず中性子を燃料にあてて、燃料を別の核物質(カリフォルニウムなど)に変える必要があるのです。新しく作られた核物質は、しばらくすると自然に核分裂を起こして中性子を出します。この間数秒から数分までのタイムラグが生まれます。この中性子ともともと燃料から出る中性子が合わさって、初めて原子炉は臨界になるのです。これを遅発臨界と呼びます。

ろうそくに例えると似ているかと思います。ろうそくは芯と着火源がなければ燃えません。火によってろうが溶け、芯を伝って火のところまで少しずつ昇り、蒸発したろうが初めて燃えるのです。

原子炉は遅発臨界で動いているため、制御棒を引き抜く=燃料をくべることをしても、燃え始めるのに時間がかかります。原発の運転この時間の余裕をうまく使いながら、1.制御棒を引き抜く(=薪をくべる)、2.新たな核分裂が始まる(=薪が燃え始める)、3.暖めたい水の量を増やす(=温まった水は発電に使う)、3.原子炉が安定する、4.制御棒を引き抜くという作業を繰り返して、出力を上げていきます。

即発臨界の場合は新しく中性子を出す核物質が作られなくても、燃料のみで臨界になってしまう状態です。ろうそくとは違い、芯のない鍋の油に火がつくようなイメージです。

(以下著者注参照)即発臨界では急激な熱が発生するため、燃料を入れている密封のケースが破損する可能性などがあります。今回の臨界事故では、定期検査中のため原子炉の蓋が開いていました。原子炉の蓋が開いていても原子炉には水が張られており、水が放射線を止めるため、通常作業員は被爆しません。ここで燃料を入れるケースが破損すると放射性物質を作業員が直に取り込む可能性が出てきます。

(著者注)想定される被害については報道からの推定で書いています。報道では「被爆する可能性があった。」という説明がありますが、被爆に至るまでの過程がないにも関わらず、被害規模だけが分かることはなく、想像が多分に含まれると考えられます。今回は燃料破損を想定して記述しましたが、正確には電力会社等から公式発表があると思いますので、そちらをご参照ください。また、公式発表の際に改めて説明を掲載したいと思います。

北陸電力ホームページ
http://www.rikuden.co.jp/opinion/index.html

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