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原子力屋の社会学基礎

「原子力は軍事開発の中から生まれてきた。」というのは科学技術的には同じ式を使いますし、事実です。しかし、軍人輸送にタクシーが使えた時代、戦争のためなら何でも使えた時代背景を考えると違う捉え方も出来るのではないでしょうか。社会学と言うと「市民は原子力に反対で国家や企業は賛成だ」という構図を描く学者が多いようですが、私は間違いだと思います。

社会学とは

国家予算、労働者、技術の全てが原爆開発に当てられた時代。手段と目的は、原爆開発であり戦争勝利であり、非常に単純なものでした。第二次大戦は終結し、冷戦は終結し、勝利の必要性がなくなりました。気が付いたら社会がとても複雑になっていたと言うのが社会学の起こりです。

例えば・・・

娯楽は豊かさの示しです。単純に考えれば、遊び=ムダです。従来は、遊びたければお金をかけ、豪遊するわけですが、今は違います。レジャーにしか使わないRV車にも省エネが求められるのが今の時代です。一方で、燃費の悪い外国車はやはり売れているのが今の時代です。何が売れるのかわからない。しかし、なにが売れるのか分かっている人がいて、この不況の中すさまじい売上を上げている。そこにある違いは何か?

かつて、米軍基地公開の際、空母を見学した小学生の「空母はかっこいいけど原発で動くのは怖い」という声が新聞に紹介されていました。皆さんはどう思うでしょうか。実際に友人に聞いたところ、多くの人が小学生に共感するようです。私は記事を見た当時高校生でしたが、違和感を感じました。彼の意見をそのまま理解するならば、戦争賛成原発反対になってしまう。では、彼の言葉の背景にはなにが隠されているのでしょうか。

社会学と言うと原子力賛成反対に分ける学問のように紹介されていますが、実際は手段と目的は必ずしも一致しない事のほうが多い。賛成反対に分けても原子力問題は何も解決しませんよ、と言って生まれた学問です。統計学、経済学、心理学。どのような手段を使ってでも社会を理解していかなければ、共通の敵や目標のないこの社会、どんな小さな目標すら達成することはできない。それが社会学の本質なのです。


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